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疲れでバラバラになりそうな心をかろうじて繋ぎ止め、今この日記をかいている。

どうしても、きちんと自分の中で文章に起こしたい話がある。
昨年から、もう三ヶ月以上もなんとか形にしようと気に掛け苦心してきた。
プロットもできているし、かなり荒めのラフドラフトまでは書いたのだが、どうしてもそこから先に進めない。
ここは一つ日記と言う体裁でその話を文章に起こしてみようと思う。
主観的な文章をもう一歩下がってほんの僅かでも今より客観視することができれば、この目論見は成功といえよう。


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   十月某日
 だらだらと夏の残滓が空から降り注ぐような生暑い天気から一変して、秋らしいつんと鼻の奥を麻痺させる冷たい空気が大気を支配していた。
 あいも変わらず僕は、全ての物事を呆れるほど簡単に放り出し、その全てを責任転嫁した。そしてそれを隠れ蓑にし、早寝早起きで健康な食生活を送りつつも、朝からニュースバラエティ番組を三本梯子するというような怠惰極まる生活を送っていた。
 健康――主にダイエットが目的だが――のために一ヶ月ほど前から筋トレも始めていた。始めたてのころはプッシュアップ十回で鈍く震えるだけだった筋肉も、今では多少の余裕を持って三倍ほどの回数をこなすだけになった。肩・胸周りが目に見えて膨れ上がり、鏡に向かうたびに少しづつ変化していく体に満足しつつも、脂肪がほとんだ落ちていないことの弊害によりトレーニングを始める前よりも一層手持ちの洋服たちがきつくなった。
 さすがにコレは本末転倒なので、一週間ほど前から二、三日に一回ほど走り始めるようになった。我が家が暮らすマンションは周囲を坂道に囲まれた高台に建っているため、まともなジョギングコースが存在しない。さらに走った距離を計算しやすいということもあって、目の前の小学校のグランドを走っている。走る時間は日によってさまざまだが、誰かに見られる気恥ずかしさあって、陽が落ちた後にしか走らないようにしていた。
 今日も軽い夕食を済ませて後、夜の十時ごろアディダスのジャージとニット帽に身を包み家を後にした。
 空には雲ひとつなく、新円の月がくっきりと浮かび上がっている。冬の始まりを告げるオリオン座が東の空に低く棍棒を振り上げている。空気はまるで月から張り巡らされた糸のように緊張感を――不自然すぎるほどの緊張感を持って周囲を不安にさせていた。「いつもより街路樹の影が濃い……?」なんとなくそんなことを思いながら通用門を通ってグラウンドに入っていく。まずはアップに三週。そのあと念入りにストレッチをして、アイポッドのスイッチを入れると走り始めた。
 鋭角なギターサウンドと黒人特有の滑らかさを持った高音の気持ちいいボーカルが流れ始めた。

   He said you're just as boring as everyone else.

 まるでオレのことみたいだな。自嘲的に笑いながら走り続ける。そう、昔は自分は人とは違うんだと思っていた。しかし、そうで無い事に気づいたときからオレは少しづつ自分自身を「変わっている」と演出するようになった。文学作品を読み漁り、アートに興味を持ち、音楽を掘り下げ始めた。アメリカに留学し、一度は挫折したけれども再挑戦した。でも、本当は凡庸で退屈でどうしようもなく怠惰な人間なんだ。自分を偽り他人に偽り、逃げて逃げてここまで来た。
 気がつくといつもよりもはるかに速いペースで走っていた。視界の隅を植え込みの、街路樹の、バスケットゴールの影がぬめるように流れていく。ぬめぬめとまるで別の生き物のように。
 ふいにそこら中から身を焦がすような視線が送られている感覚に襲われた。
 
   And you cannot hide or ever, ever escape
   And you cannot hide or ever put it away
   Something glorious is about to happen
   The reckoning

加速するドラム。鋭さを増すテレキャスター。繰り返される疑問。

   Why'd you have to get so hysterical?
   Why'd you have to get so hysterical?
   Why'd you have to get so hysterical?
   Why'd you have to get...

 それらに呼応するように僕が走るスピードは増し、呼吸はあれ、息苦しさに涙がこぼれ始める。視界を流れ去る影からはますます濃厚に生気が立ち込め、今や独りでに形を変え這い出して来た。

   So fucking useless?
 どうしてオレはこんなに役立たずなんだ。親の金を湯水のように使い役に立たないことばかり覚えた挙句、アメリカには戻れなくなる。申請のプロセス中なのをいいことに外出もせず日がな一日怠惰な生活を送り、母親とはつまらないことで諍いが起こり、お互いに傷つけあう。オレは初めて母親を突き飛ばしてしまった。そんなつもりじゃなかったのに……そんなつもりじゃ…………。
 焦燥感が分厚い壁のようにそびえ立ち、今にも押しつぶそうと後ろから襲ってくる。逃げろ!逃げろ!逃げろ!逃げろ!逃げろ!逃げろ!逃げろ!逃げろ!逃げろ!逃げろ!逃げろ!逃げろ!逃げろ!逃げろ!逃げられないのか。
 ふいに視界の隅を黒い塊が走り抜けた。その瞬間全身が凍りついた。さっきまであんなに荒れていた息もぴたりと止まり、心臓だけが骨の籠から逃げ出そうと必死で暴れていた。
 誰かがいる……視線のすぐ下。自分の足元に何かがいる……。ゆっくりと、気配を殺してヤツに悟られぬようにゆっくりと足元を覗き込む。しかしその願いをあざ笑うかのように黒い塊は、音もなくゆっくりとこちらの足元を覗き込んできた。
 オレは自分の影に怯えていたのだ。不自然に明るい月が全ての陰影をあまりにもくっきりと浮かび上がらせていたために、自分の影がまるで自分の影に見えなかった。途端にさっきまでの身を削るような焦燥感は消え去り、安堵からか思わず空を振り仰いだ。
 さっきまで半ば白い校舎に隠れていたオリオンは屋上から飛び上がり今にも牡牛に襲い掛かろうとしている。オリオンの左斜め下にはシリウスが眩しく瞬いている。 紅く、青く、規則的に輝くさまは何かしら人工物のようなものをイメージさせた。
 何かが引っかかる。不自然なものを感じる。星を人工物ように感じることがあるだろうか。そう思って目を凝らしてよく見ると、シリウスから黒い糸がぶら下がっている。その糸を湧き出ててきた「影」達がすべるように地上に向かって降りていく。
 シリウスからやってきた「宇宙猿(スペースモンキーズ)」は今や、世界にカタストロフを起こすために校舎の中を隙間なく狂気で満たし暴れまわり始めた。


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気がついたらほとんど書ききっちゃってた。
ラフドラフトということで。ほとんど文章を推敲せずに勢いだけで書きましたが大まかなストーリーはこういうことで。
後はもうちょっと冒頭に「僕」のシチュエーションを説明する文章を足したり、ところどころの言い回しや、シリウス、影、月なんかを印象付ける一文を挿入してもいいかな、と思っている。
終わり方については、この後僕はグラウンドを去りマンションに向かう途中で巡回中のパトカーに会う。そして名前を問われるが答えられなくなっている。というパターンも考えているが……
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